【機械の故障解析】機械故障を未然に防ぐための焼付き対策と疲労破壊の現象解析手法
機械装置の突発的な故障の中でも、「焼付き」と「疲労破壊」は特に深刻な損傷を引き起こす原因となります。潤滑不良や設計上の応力集中が原因となるこれらの現象は、適切な対策を講じなければ再発リスクが高まります。
こちらでは、焼付きの対策と、疲労破壊の現象解析手法についてご紹介します。故障解析について専門家に相談したいという方は、TAS研究所にご相談ください。
焼付きによる故障を防ぐための対策

焼付きとは、機械部品の接触面が高温・高圧の条件下で溶着し、摩擦や摩耗が急激に進行する現象です。この現象は、主に回転機械や往復運動を伴う装置の摺動部で発生しやすく、特に潤滑不良や過大な荷重がかかっている場合に顕著に見られます。
焼付きが発生すると、部品表面に激しい損傷が生じ、機械全体の機能不全を招く可能性があるため、事前の対策が極めて重要です。
また、一度焼付きが発生すると修復が困難となるケースが多く、部品交換や設備の一時停止による生産損失も無視できません。したがって、焼付きの理解と予防策の実施は、工場運営におけるリスクマネジメントの重要な一環です。
焼付きが発生するメカニズム
焼付きは次のような段階を経て発生します。まず、部品同士が相対運動をする中で潤滑状態が不十分であると、接触面での摩擦熱が急激に増加します。この熱により材料が局所的に軟化し、場合によっては溶融します。その結果、接触面同士が化学的または物理的に結合し、溶着状態となります。この溶着が繰り返されることで部品表面が引き剥がされ、深刻な表面損傷が発生します。最終的には、部品が機能を失い、重大な機械故障に至ります。
このような現象は一見突発的に見えることもありますが、実際には潤滑不足や異常摩擦熱の蓄積といった兆候が前段階として存在します。振動解析や温度監視といった常時モニタリング技術を取り入れることで、焼付きの兆候を早期に検出することが可能です。
焼付き防止のための対策
潤滑管理の徹底
焼付きの最も基本的な対策は、潤滑状態の適正化です。潤滑剤は摩擦を減らすと同時に、摩擦熱を除去する役割を担っています。潤滑剤の粘度、添加剤の種類、使用温度範囲などを考慮した選定が求められます。また、潤滑剤の供給システム(オイルポンプやグリースガンなど)が正常に機能しているか定期的に点検し、不具合があれば即時修理・交換を行うことが重要です。
材料および表面処理の工夫
焼付きに強い材料を選定することで、発生リスクを大幅に下げることが可能です。例えば、硬度や耐熱性に優れる材料(高速度鋼、超硬合金など)を使用することが効果的です。加えて、表面硬化処理(浸炭、窒化、クロムメッキなど)を施すことで、表面の耐焼付き性を向上させる手法も広く用いられています。これにより、接触面での溶着が起こりにくくなり、摩耗寿命も延びます。
設計段階での配慮
設計時点で、接触圧力を最小限に抑える構造や、摩擦を低減するジオメトリを考慮することも焼付き防止には有効です。例えば、摺動面の面積を適切に確保する、ベアリングやブッシュなどの摺動部材に適切なクリアランスを設けるなどの工夫が必要です。
疲労破壊の現象解析手法

疲労破壊は、繰り返し荷重(サイクル荷重)を受けた金属部品が、最終的に破断に至る現象です。単発的な衝撃や荷重ではなく、比較的低い応力が長期的に加わることで、材料内部に微小亀裂が生じ、それが徐々に進行して破壊に至ります。この現象は、航空機、橋梁、自動車、産業機械など、あらゆる分野で問題となる重要な故障モードです。
疲労破壊は材料の欠陥がなくても発生するため、見た目の健全性では判断できません。そのため、設計、材料選定、製造、検査、メンテナンスの各工程において、一貫した管理が不可欠です。疲労破壊の兆候をいかに早く捉えるかが、安全性と経済性の両面で重要となります。
疲労破壊の進行メカニズム
疲労破壊は、初期亀裂の発生、亀裂の進展、最終破断という三段階の過程で進行します。
初期段階では、材料表面または内部にある欠陥や不均質な領域に応力が集中し、微小な亀裂が生じます。この亀裂は、繰り返し荷重によって徐々に拡大し、一定の限界に達すると突然破断します。破面を観察すると、亀裂の進展方向に沿ってストライエーションやビーチマークと呼ばれる模様が確認できることが多く、これにより破壊モードを特定する手がかりが得られます。
このメカニズムは、破壊力学にもとづく理論的解析と実験的手法の両面から検証されており、金属疲労の理解と制御において不可欠な知識です。
疲労解析に用いる主な手法
S-N線図
S-N線図(応力振幅-繰り返し数曲線)は、特定の材料における疲労限度を把握するための基本的な手法です。試験片に一定の繰り返し応力を加えて破壊に至るまでのサイクル数をプロットすることで、その材料の寿命を予測できます。特に、高サイクル疲労の評価にはこの手法が用いられます。
この曲線により、疲労限度以下で使用すれば、事実上無限寿命が期待できる設計が可能になります。一方、疲労限度のないアルミニウム合金などでは、亀裂の進展速度解析など別のアプローチが必要となります。
有限要素解析(FEA)
FEAは、部品の応力集中部位を特定するうえで有効です。疲労破壊は、応力の不均一分布によって加速されるため、事前に応力分布を可視化し、設計を最適化することで、破壊の発生を抑止できます。近年では、FEMによるマルチアクシス疲労解析も進化しており、より現実的な荷重条件下での寿命評価が可能になっています。
亀裂進展解析
線形破壊力学にもとづき、複雑な荷重条件下での亀裂進展を評価します。これにより、メンテナンスのインターバル設定や部品交換時期の予測精度が向上します。
また、亀裂の進展速度に影響を与える要因(応力拡大係数、残留応力、環境因子など)を考慮した解析により、実運用に即した信頼性評価が可能です。
解析結果の活用
疲労破壊の現象解析から得られる知見は、材料選定、表面処理、設計変更、保守計画の策定に活かされます。例えば、亀裂の起点となる傷の原因を特定し、製造工程の改善を図ったり、耐疲労性を高めるコーティング技術を採用したりすることが可能です。これにより機械の安全性と耐久性が大幅に向上します。
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