第91回不具合対応ブログ(高性能化,高機能化による不具合)
ユーザー,顧客からの要求スペックが高く,機械,部品の高性能化,高機能化を検討されている企業は多い.その高性能化したが故の不具合は少なくない.
- ユーザーの想定外の使われ方による不具合
機械の高性能化が図られていくと,ユーザーが思わぬ使い方をして不具合につながるケースがある.その1つはロケットスタートである.車が高性能化してレーシングカーのようにスピードを競いたいと一部のユーザーが想定外の使い方をするようになった.
AT車の場合は
1. 左足でフットブレーキを目一杯強く踏み込む(車が動かないように固定)
2. 右足でアクセルを踏み込み、エンジンスピードを適切な回転数(トルクバンドや最大トルク手前のストール回転数)まで上げる
3. シフトが「D(または専用の1速)」に入っていることを確認する
4. シグナル消灯などのタイミングに合わせて、左足のブレーキを素早く完全に離す
5. 同時に右足のアクセルを全開にしてトラクションをかける
MT車の場合は
FRの場合は、トルクバンドになる4000回転前後をキープして、発進の直前にサイドブレーキいっぱい引いて半クラッチにして、サイド降ろしてクラッチ繋いでスタートする.
AT, MT両方ともクラッチに高負荷をかけるため早期に焼付いてクラッチが焼損して不具合として挙がるようになった.
AT車は電子制御でアクセルやクラッチ,エンジン回転数を自動で最適にコントロールするようになり,クラッチは焼損を回避するようになる.
MT車は人がコントロールするので,個人の責任の部分もあるので一概に不具合とはならない.しかし,ユーザーのクラッチ焼損を回避し,ロケットスタートを味わいたいとの思いを実現させた車もある.
レクサス LFA には、最も効率的かつ猛烈な加速で急発進を行うシステムとして、ローンチコントロール(Launch Control)機能が搭載されている.
ローンチコントロールの作動手順
1. 停車状態でブレーキペダルを強く踏み込みます。
2. 走行モードを「スポーツモード」に切り替えます。
3. シフトスピード(変速速度設定)を最高レベルの「レベル7」に設定します。
4. シフトを1速に入れます。
5. ステアリングのパドルシフト(左側のダウン側)を5秒間ホールド(引きっぱなしに)します。
6. メーターパネルのディスプレイに「LAUNCH」という文字が表示されます。
7. パドルシフトから手を離し、ブレーキを踏んだままアクセルペダルを床まで踏み込みます。
8. ブレーキペダルを一気に離すと、V10エンジンが最適な回転数を維持したままクラッチを繋ぎ、猛烈なダッシュ(0-100km/h加速:約3.7秒)を開始します 駆動系への大きな負荷: ローンチコントロールは、トランスミッション(6速ASG)やクラッチに凄まじい負担をかけるため、連続使用が制限されていたり、生涯の利用回数に上限が設定されていると言われている.無制限に使われると不具合につながるため安全率を設定している.

- 横展時の不具合
ある機種で量産化された高性能の材料をそのまま,他の機種へ展開した時に不具合が発生する場合がある.低粘度油への切り替えによる不具合はその典型的な事例である.
EHL(弾性流体潤滑)における油膜厚さは,潤滑油の粘度(動粘度・絶対粘度)が高いほど厚くなる(概ね粘度の0.6〜0.7乗に比例).ベアリングなどの玉を使う製品の寿命は
次ページ図のように油膜厚比が3以上であれば良いが,それ以下になると急激に寿命が短くなる.ここで油膜厚比とはEHL膜の最小厚さと二面の合成粗さの比である.この油膜厚を確保するには,部品の粗さを小さくする必要があるが,油膜厚が小さすぎても焼付きのリスクがある.従って,低粘度油の展開は慎重にする必要がある.

また,Oリングやオイルシールなどのゴム製品が使われる場合はオイルの低粘度化による膨潤による主な影響を事前検討する必要がある.
• 物理的特性の低下: ゴムが軟化し,引っ張り強度や耐摩耗性が著しく低下する • 寸法の変化: Oリングやパッキンが肥大化し,溝からはみ出したり,作動部の摩擦・抵抗が増大したりする

このようにゴム製品だけでなく,特に樹脂材料についても検討する必要がある.
