第50回不具合対応ブログ(樹脂部品の焼付き・摩耗)
樹脂の焼付き,摩耗は一般現象としては金属と同様に考えられるが,大きく異なる場合がある.樹脂は物性として金属と比較して柔らかく,温度によって塑性流動圧力が著しく変化する.ガラス転移温度(Tg)や融点に近づくほどこの塑性流動圧力値は低下する.そのため比較的応力や温度が低い条件で摩耗が発生し,焼付きに至る.ここまでは感覚的に理解でき,注意して使用されているが,それ以外の原因で不具合が発生することがあるのでいかに取り上げる.
- 繊維強化熱可塑樹脂
ナイロン等の熱可塑樹脂で,樹脂のみでは強度、剛性、耐熱性、寸法安定性が不足する場合,ガラス繊維やカーボン繊維などを加え,必要性能とコストのバランスで繊維種と充填率を選択する.一般的には射出成型で作られるが,ここで見落としてはいけない特性としてガラス繊維の方向性がある.製品が局部的に摺動した場合,摺動方向が繊維方向と平行か直行している場合では,平行方向の方が摩耗に不利である.一方,直行方向の場合は繊維がアブレッシブ摩耗を引き起こす場合もある.表面樹脂層がそのまま使われる場合はガラス繊維が現れるまでの時間があるが,成型後研削,研磨等を実施してガラス繊維面が露出している場合は要注意である.対策は面圧を下げる,後加工廃止,繊維率,繊維種,樹脂種の変更等がある.
- 熱硬化樹脂
ここではフェノール樹脂について取り上げる.ノボラックおよびレゾールの2つのタイプが用途によって使い分けられている.主にノボラック型は粉末で使われ,レゾール型は液体であり,ベークライトとして使われているものもある.熱成型装置が必要となり,製品によってはガス抜きが必要となる.製造不良になると製品内部にガスが残り空洞が発生,また熱成型時に表面にクラックが入る場合がある.従って,製品形状が変わった場合には,感覚的に同等であり確認が不要,と判断することは避ける必要がある.また摺動する部品の場合に性能不良になる場合がある.理由は成型時の圧力や温度のばらつきによって最表面状態が変動するので摩擦や摩耗に影響を与える.最表面を研磨して摺動面を安定化させることも検討されたい.
- スーパーエンプラ
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン),PI(ポリイミド)等の高温環境でも長期間使用できる、極めて高い耐熱性と強度を持つ高性能なプラスチックをスーパーエンジニアリングプラスチックすなわちスーパーエンプラと呼ぶ.最近は高負荷,小型軽量化などの要求で多くの部品で採用されるようになってきた.ポリイミド樹脂にはガラス転移温度を持つもの持たないものがあり,高負荷時の耐摩耗性が大きく異なるので選択される際は注意されたい.ここではここまでの言及にとどめたい.

